新株予約権
新株予約権とは、新株予約権を有する者が、株式会社に対して一定の金銭等を出資することにより、会社から一定の株式の交付、または会社の自己株式の交付を受けることができる権利のことです。平成13年の商法改正によりストック・オプション、転換社債、新株引受権付社債等を廃止して、これらを新株予約権として統一することとなりました。ちなみにストックオプションとは、会社が取締役や使用人に対し、あらかじめ定められた価格で会社の株式を購入することができる権利を付与するもので、転換社債とは、会社の社債権者が有する社債を所定の期間内に所定の条件で当該株式会社の株式に転換できる権利を付与した社債のことです。また新株引受権付社債(ワラント債)とは、所定の期間内に、所定の数の新株を、所定の価格で株式会社に発行することを請求できる権利が付与された社債のことです。転換社債とよく似ていますが、転換社債は転換すると社債は残りませんが、新株引受権付社債は新株引受権を行使した後も社債が残ります。商法改正後、転換社債は転換社債型新株予約権付社債、新株引受権付社債は新株予約権付社債と呼ばれています
新株予約権の発行する場合、新株予約権の募集事項(会社法第238条)につき原則として株主総会の特別決議(会社法第309条2項6号)が必要ですが、募集事項の決定を株主総会の決議により取締役(取締役会設置会社においては取締役会)に委任することもできます。公開会社では株主総会ではなく取締役会で決議(会社法240条1項)することとされており、割当日の2週間前までに、株主に対し当該募集事項を通知又は公告をしなければならない(会社法第240条2項、同法同条3項、但し同法同条4項に該当する場合を除く)とされています。ただし有利発行に当たる場合は、公開会社、非公開会社を問わず株主総会において会社法第238条3項に関する理由を説明するとともに株主総会の特別決議が必要です(会社法第240条1項、同法238条2項)。株主割当により新株予約権を発行する場合は、会社法238条2項から4項、同法239条、同法240条を適用しないとしたうえで、募集事項の決議機関を会社法241条3項で規定しています。基本的には株主割当以外による新株予約権の発行における募集事項の決議機関と同じ扱いですが、非公開会社において募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社においては取締役会)に委任する場合は、定款の定めによって委任することとなっています。また株主割当においては、新株予約権の募集事項に加えて、株主割当である旨および引受けの申込期日も上記決議機関において定める必要があり、新株予約権の割当日の2週間前までに会社法241条4項各号に関する事項を株主に対して通知しなければなりません。
新株予約権の申込みをしようとする者は、申し込みをする者の氏名又は名称及び住所、募集新株予約権の数(会社法第242条2項)を記載した書面を株式会社に対して交付するか、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、電磁的方法により提供しなければなりません。株式会社は、申込者の中から募集新株予約権の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集新株予約権の数を定めなければなりません。このとき、募集新株予約権の目的である株式の全部又は一部が譲渡制限株式である場合、または募集新株予約権が譲渡制限新株予約権(新株予約権であって、譲渡による当該新株予約権の取得について株式会社の承認を要する旨の定めがあるものをいう。)である場合は、定款に別段の定めがある場合を除き株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければなりません。そして株式会社は、割当日の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集新株予約権の数(当該募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額を含む。)を通知しなければなりませんただし、募集新株予約権を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、募集新株予約権の申込み及び割り当てに関する規定(会社法第242条、同法第243条)は適用されませんので、上記の手続きは省略できます。
会社法では、新株予約権を発行する際に、募集事項のひとつとして「割当日」を必ず定めなければならず、有償で発行する場合においても払込みの有無に関わらず、新株予約権の申込者は割当日に新株予約権者となります(会社法第245条)。新株予約権の設定が株式会社の割当てによって確定した段階で、事業報告や登記等により、そのことが株主等の第三者に対して開示されることが望ましいという理由に基づくものです。