監査役の登記
監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査することを業務とする会社の機関で、監査役は株主総会の普通決議によって選任します。会社法施行前までは、株式会社においては必ず監査役を1名以上置き、小会社(資本金1億円以下)の境目を基準として、監査役が有する監査権限を会計監査権限と業務監査権限とに区分されていましたが、会社法施行後は、監査役の設置については一定の条件のもとで会社の自由とし、これまでの資本金による監査権限の区分をなくし、原則としてすべての監査役は業務監査権限を有するものとされました。ただし公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます。監査役は、法務省令(会社法施行規則第105条)で定めるところにより、監査報告を作成する義務があります。 それゆえに監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。また監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければなりません。
監査役の資格は取締役の資格に関する規定(会社法第331条1項、2項)を準用していますので、1.法人、2、 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者、3. この法律若しくは中間法人法の規定に違反し、又は会社法第331条1項3号に掲げる証券取引法の罪、民事再生法の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律の罪、会社更生法の罪若しくは破産法の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者、4.3以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)なる者は監査役になることができません。また監査役は、当該株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができません。監査役会設置会社においては、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役である必要があります。
監査役の任期は、原則として選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなっています。ただし公開会社でない株式会社においては、定款によって、監査役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。また定款に定めることにより、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることができます。
なお監査役の任期は、1.監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更、2.委員会を置く旨の定款の変更、3.監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更、4.その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしたときは、その定款の変更の効力が生じた時に任期が満了します。
監査役は、いつでも株主総会の特別決議によって解任することができます(会社法第339条、同法第341条、同法309条2項7号)。 ただし、これにより解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。