株式移転と登記
株式移転とは、1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させること、具体的には、既存の会社A社が、その親会社となるB社を設立し、A社の株式をB社がすべて取得する代わりに、B社の株式をA社の株主に交付するというものです。株式移転は、既存の株式会社の完全親会社を新たに設立する場合に利用されます。株式移転をする場合は、会社法第773条1項各号に掲げる事項を定めた株式移転計画を作成しなければなりません(会社法第772条)。 株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得し、株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、会社法第773条第1項第6号(株式の割当てに関する事項)に掲げる事項についての定めに従い、同項第5号の株式の株主となります。
株式移転完全子会社は、原則として株主総会の特別決議によって、株式移転計画の承認を受けなければなりません(会社法第804条)。 株式移転完全子会社が種類株式発行会社である場合において、株式移転完全子会社の株主に対して交付する株式移転設立完全親株式会社の株式等の全部又は一部が譲渡制限株式等であるときは、当該株式移転は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が2以上ある場合にあっては、当該2以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合を除き、当該種類株主総会の決議が別途必要となります。また株式移転完全子株式会社が種類株式発行会社以外の公開会社である場合において、移転対価が譲渡制限株式等である場合には、株主総会の特殊決議が必要となります(会社法第309条3項3号)。
株券発行会社が株式移転をする場合には、株式移転に係る株式の全部について株券を発行していない場合を除き、当該行為の効力が生ずる日までに当該株券発行会社に対し当該株式の株券を提出しなければならない旨を当該日の1箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければなりません(株券提供公告に付き会社法第219条1項8号、新株予約券提供公告に付き会社法第293条1項7号)。
株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合 当該新株予約権付社債についての社債権者は、株式移転完全子会社に対し、株式移転について異議を述べることができます。この場合には、株式移転完全子会社は、会社法第810条2項各号に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(異議を述べることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければなりません。この異議申述期間は、1箇月以上必要です。 ただし、官報による公告のほか、第939条第1項の規定による定款の定めに従い、同項第2号又は第3号に掲げる公告方法によりするときは、知れている債権者に対する各別の催告を省略することができます。 債権者がこの異議申述期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該株式移転について承認をしたものとみなされます。債権者がこの期間内に異議を述べたときは、株式移転完全子会社は、当該株式移転をしても当該債権者を害するおそれがないときを除き、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければなりません(会社法第810条、債権者保護手続き)。