合同会社と登記
合同会社(LLC)は会社法施行後に新しく創設された会社で、出資の範囲内においてのみ責任を負うとする有限責任社員のみで構成する会社です。これに対して無限責任社員のみで構成する会社を合名会社といい、無限責任社員と有限責任社員で構成する会社を合資会社といいます。旧商法では、合名会社と合資会社をそれぞれ章に分けて規定されていましたが、会社法では、合名会社と合資会社、合同会社を持分会社と総称し、これらに共通して適用される部分と、個別に適用される部分とに分ける形で法整備されています。合同会社は、有限責任社員のみで構成するという点で株式会社とよく似ていますが、株式会社については、法的知識や交渉能力、資金力などを持たない者であっても、容易に株主や債権者になり会社の規模を拡大しやすくするよう、会社に対する法律上の規制を厳しくすることによって、株主や会社債権者を手厚く保護しているのに対して、合同会社ではこのような法律上の規制を積極的に講じていない点で異なります。
合名会社、合資会社又は合同会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません。この定款は、電磁的記録をもって作成することもできますが、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令(会社法施行規則第225条)で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければなりません。 持分会社の定款には、会社法第576条1項各号に掲げる事項を必ず7記載しなければなりません。 また設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、会社法第576条第1項第5号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければなりません。このほか、持分会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項(相対的記載事項)及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないもの(任意的記載事項)を記載し、又は記録することができます。設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません。ただし、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、合同会社の成立後にするができます。持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します。 合同会社の登記事項は会社法第914条1項各号に規定されています。合同会社では、合名会社や合資会社と違い労務出資や信用出資は認められないとされていることから、社員の財産出資の額を資本金の額としてあらわすことできるため、合同会社では同法同項5号において資本金の額が登記事項とされています。
旧商法では、合名会社の社員と合資会社の無限責任社員が会社の業務を執行し、合資会社の有限責任社員は、業務を執行し会社を代表することができませんでした(旧商法第156条)が、会社法では、有限責任社員のみで構成する合同会社が創設されたことや、社員の責任の範囲の違いによって業務執行権や代表権の有無を設ける必要はないなど理由から、持分会社は、原則としてすべての社員が業務執行権を有するとして上で、例外的に定款でそれに制限を加えることができるとされました。社員が2人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定します。ただし、持分会社の常務については、その完了前に他の社員が異議を述べた場合を除き、各社員が単独で行うことができます。業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が2人以上いるときは、持分会社の業務は、業務を執行する社員の過半数をもって決定します。 ただし支配人の選任及び解任は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定します。業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、効力を失います。定款の定めに基づく業務執行社員は、正当な事由がなければ、辞任することができません。また定款の定めに基づく業務執行社員、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができます。 これらの規定は定款で別段の定めをすることも可能です。