オンライン申請


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平成17年3月7日より、不動産登記のオンライン申請が始まりました。オンライン申請は、法務大臣の指定を受けた法務局から順次適用となりますので、不動産所在地を管轄する法務局が法務大臣の指定を受けていない場合は、オンライン申請はできません。ただし書面による申請は、オンライン指定を受けた法務局であるか否かに関らずすべての法務局において申請することができます。

オンライン申請をする場合、不動産取引に係る当事者全員が事前に電子署名を作成し電子証明書を取得する必要があります。そのためオンライン申請をする前提として、電子署名を作成するソフトや、文書をPDF化するソフト、PDFファイルに電子署名をするためのプラグイン、公的電子認証対応のICカードリーダーといったソフトを用意するととに、JREやオンライン申請システムのインストールなどの各種設定が必要で、書面による申請に比べて少々ハードルが高くなっています(費用がかかる、面倒くさい)。また登記の申請に必要な添付書類はすべて電子化しなければならないので、オンライン申請可能な登記は、かなり限定されてきます。

これまでは不動産登記が完了すると、不動産の権利を証明する権利証というものが交付されていましたが、オンライン申請が開始してからは、この権利証の交付に代えて登記識別情報という12桁の英数字が通知されることとなりました。従来までは共同申請を前提とする不動産登記を申請する際には、登記義務者の申請意思を担保する手段として、申請書に権利証を添付していましたが、今後は法務局から発行された登記識別情報が記載された用紙を添付しなくとも、そこに書かれている(12桁の英数字)を入力(書面申請であればメモ用紙に記入して申請書に添付)することで申請することが可能となりました。ただし、改正前に発行されている権利証はオンライン指定後においても引き続き使用することができます。

オンライン申請の開始により、権利証から登記識別情報へ移行したことで、今後は情報の管理という面で新たな問題が発生します。登記識別情報という12桁の英数字が分かれば、権利証のように原本そのものがなくとも登記の申請が出来てしまいますので、今後は物そのもの管理に加えて、これに記載されている情報が外部に漏れないように管理することも要求されます。現状において、クレジットカードの番号や個人情報などが、winnyなどのようなP2Pを通じて外部に流出し、ひそかに取引されているという事件が度々報道されています。今後はどこかから流れてきた登記識別情報が高額で取引されるおそれがあるとともに、情報はいくつでもコピーできるので、これが無限に拡散してしまうおそれもあります。情報を管理しなければならないという側面から考えると、モノそのものを管理するよりもリスクが高いといえるかもしれません。そのためこういった問題を解消する手段のひとつとしてオンライン登記の申請時点において登記識別情報の通知を否定し、または登記識別情報通知後にその情報を失効させる登記識別情報の失効制度なるものが設けられています。そして登記識別情報が存在しない場合には、事後の取引においては登記識別情報を提出する代わりに事前通知制度または司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度を利用して申請することとなります。

これまで不動産売買の取引の現場においては、銀行などで代金の支払いと権利証の引渡しを同時に行い、司法書士が本人確認や必要書類のチェックを行ってきました。売主と買主双方の債務を同時に履行することで、取引の安全を図っているのです。しかし今後は権利証が登記識別情報に変わり、登記識別情報の失効制度が設けられたことで、同時履行を担保することがやや困難となりました。登記識別情報が失効しているか否かを目視で確認することは不可能で、法務局のコンピューターにその情報を入力して照合しない限り、失効の有無は確認できません。この法務局のコンピューターで照合する制度のことを有効確認または失効していないことを確認するための制度といいますが、これを行うには登記識別情報と印鑑証明書、委任状への実印の押印が必要で、司法書士が事前にこれらの書類を預かるか、不動産取引の決済当日にこれらの書類を預かり管轄の法務局まで出張して確認する必要があります。前者の場合、司法書士に預けるとはいえ、事前に債務を履行させることとなりますので、不動産取引に立ち会う司法書士が顔見知りでもない限り、不動産の所有者としては若干抵抗があるでしょう。、また後者の場合、法務局までの出張に要する時間によっては、決済の場所で長時間、売主と買主、仲介業者を待たせることにもなりかねません。またこの有効確認をオンラインで行う場合、申請人が電子証明書を事前に取得していなければならず、かつ決済場所にインターネット環境が整っている必要があるといった様々な問題が残ります。オンライン申請を前提とする新不動産登記制度は、まだ始まったばかりですから、こういった問題は今後の課題と言えましょう。

まだ日本では認可が下りていない電波で、次世代高速通信ワイマックスというものがあります。これが普及すれば、上記のようなインターネット環境の問題は多少改善されるかもしれません?


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